2020.12.14

高崎物語 ー願ー

たかさきコミュニティシネマ

高崎の映画シリーズ『高崎物語』第2弾

高崎のまち並や自然、高崎人の心意気や紡いできた生活を、大切に詰め込んだ映画を作りたい。そんな思いでスタートした『高崎物語』に、この度2作目が誕生しました。高崎市PR映画として製作された『高崎物語 -夏- 』からそのタイトルを引き継ぎ、新たな高崎短編映画『高崎物語 -願- 』を皆さまにお届けします。

STORY

小町は高崎市内で珈琲店を営んでいる。東京から少し前に移住してきたばかりだ。そんな小町のもとに、心待ちにしていたお客がようやく東京からやってくることに…。

 『高崎物語 願』


作品情報

2020年 23分31秒 color

出演 北浦愛/深水元基/新名基浩/足立智充/坂川使音/河井青葉

監督・脚本 日向朝子
プロデューサー 志尾睦子
ラインプロデューサー 久保智彦
撮影 彦坂みさき
照明 金子秀樹
録音 渡辺丈彦
ヘアメイク 浅井美智恵
スタイリスト 齋藤ますみ
編集・カラーグレーディング 稲川実希
音楽 野崎美波
制作・車両 飯塚香織
美術・制作補 日野原明美
撮影助手 温水麻衣子
監督助手 長澤一生
撮影車両 信澤憲一/大野正人
車両 柳川高明
高崎フィルム・コミッション 山藤堅志

制作 たかさきコミュニティシネマ/高崎フィルム・コミッション
製作 高崎映画祭

監督プロフィール

監督・脚本 日向朝子
1978年、東京生まれ。14歳の時に映画を作る人になろうと思い、日本大学芸術学部映画学科に進む。在学中に短編映画を作り始める。2003年、短編映画「Finder」でショートピース!仙台短篇映画祭審査員奨励賞を受賞。同年、長編映画脚本「SEESAW」でサンダンス・NHK国際映像作家賞優秀賞を受賞。そののち多くの短編作品を経て、2010年、初の長編映画「森崎書店の日々」が公開。2014年には長編映画「好きっていいなよ。」が全国一斉ロードショー。2016年からは短編シリーズ「BOLERO」も製作中。そのほか主な作品に「フォーゴットン・ドリームス」、脚本作品に「吉祥寺の朝日奈くん」など。

about FILM

高崎物語−願− に寄せて

『高崎物語』は、地方都市高崎の魅力を伝えるプロジェクトの一環として始まりました。景色や風土、積み重ねてきた土地の歴史、まちとしての特徴、そして何より高崎でくらす人々の暮らしを、ほんの少し垣間見るようなそんな映画づくりを目指しました。

第一弾の『高崎物語–夏–』(2018年 片元亮監督)は、市民にとってなじみ深い群馬交響楽団に影響を受けて音楽家を目指す音大生・裕を主人公に、ある夏の数日を描きました。

第二弾を進めるにあたり、サブタイトルとなる–○–は、手掛けていただく監督にある意味丸投げ状態でお願いすることにしました。片元監督がそうであったように、ロケハンのために高崎を訪れ、資料を読み耽る監督が目にした高崎、拾い上げたテーマを映画にしていただくのがいいだろうと思ったからです。

日向朝子監督に第二弾をお願いしたのが2019年の12月、翌春の高崎映画祭のクロージングで上映することを念頭にお願いしました。ロケハンに回り、脚本化していただくまでにいろんな話をしたと思います。そうして脚本が出来上がり、『高崎物語−願–』は産声を上げました。高崎に移住してコーヒー店を営む小町の物語です。そして私たちはこの物語を片手にまた町をめぐり、ロケ地を確定し、たくさんの人の手を借りて撮影を行いました。2020年2月下旬のことでした。その後急ピッチで仕上げをし、当時開催予定だった34回高崎映画祭のクロージング上映に向けて進みました。

春を迎える頃、コロナウイルス感染防止のため、高崎映画祭で予定されていた全プログラムの上映中止を決定しました。『高崎物語―願―』は人々の願いを込めたまま、上映する日を待ちわびることとなりました。

高崎の光と風、そして澄んだ空気の感じられるあったかな短編映画を、多くの人に届けるためにはどうしたら良いのか、紆余曲折悩みましたが、この度まずはこのサイトで<上映>していくことにしました。ここから多くの人の手に渡りこの映画が育っていくことを願っています。

そしてもう少し成長できたら、今度は劇場のスクリーンで、伸び伸びとこの映画に羽ばたいてもらいたいと思っています。その日を願って。まずは皆様のところへ『高崎物語–願–』をお届けします。

プロデューサー 志尾睦子

from DIRECTOR

 ゆっくりしたものが見たい。短編映画を作らないかと志尾さんからお話をいただいたころ、ふっと言われたのを覚えています。ゆっくりしたもの。そのひと言は妙に印象に残っています。たぶんそのころの私の気持ちがせかせかとしていたのだろうとも思いますし、それから、懐かしいひと言だなとも思いました。かつて接したことがあるような…。さて、ゆっくりとしたものを…作る。それは、どんなこと?それはどんなことだっただろう?そんなところから、この度の短編制作は始まりました。

 脚本を書こうと高崎でシナハンをして過ごして、東京に帰ったころにふと浮かんだのがこの小さな願いの物語です。誰かの何かを願うこと。なんだかそういうことを、描けたらなと思いました。誰かのことを想って、願う。…これは私自身、どこかに置いて忘れてしまっていて、ずっと、忘れていた気持ちです。でも高崎の、すこしゆったりとした時間の中で過ごしているうちに、私の中の忘れていた引き出しがそっと開いた、そんな気がします。誰かのことを見守る人がいて、誰かに見守られている人がいる。それは何でもないようなことだけれども、これからもずっとそうであってほしいと作りながら思いました。

 もうひとつ、映画の中に残したかったものがありました。映画のまちとしての、高崎です。その言葉通りの描き方をしてはいませんが、高崎というまちで暮らすことを選んだひとりの女性を通して、残せたかなと思います。どうしてこのまちに?彼女がそんな風に訊かれる場面があります。彼女の答えは、ささやかなものです。でも、その小さなきっかけは、彼女の中で、長い時間をかけてひとつの大きなきっかけになった。映画とともに、まちとともに。その長い時間のかけらが残せていればと思います。

 ゆっくりしたものになったか分かりませんが、ゆったりとした気持ちになれる映画になっていればと思います。2020年は、ほっと息をつける時が失われたような一年でした。どんな人にとっても、どこにいても。映画を見ている時間が、心安らぐひとときになってくれたらと願っています。

 ぜひお楽しみいただけたらと思います。

日向朝子